ノーベル賞支えた 町工場の技術力 「マイクロピペット」の先端部加工

ノーベル賞支えた 町工場の技術力 「マイクロピペット」の先端部加工

2013-10-27 東京新聞

iPS細胞(人工多能性幹細胞)を開発し、二〇一二年のノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥・京都大教授が使用した実験器具「マイクロピペット」には、プラスチック成形を得意とする大田区の町工場の技術が詰まっていた。受賞から一年。器具メーカーがホームページ上に開発の事実を公表し、“縁の下の力持ち”の存在がようやく明らかになった。

約四千社ある町工場の応援を区政の重点に掲げる大田区。報道各社が集まった松原忠義区長の今月十八日の記者会見で、区側は粋な計らいをみせた。山中教授愛用の実験器具の主要部品を手掛けた大田区中央、「一英(いちえい)化学」社長の西村英雄さん(71)を特別ゲストに招き、開発経緯について公の場で初めて説明する機会を設けたのだ。

マイクロピペットは遺伝子実験などの際、ごく微量の液体を量る器具。先端部を加工した西村さんは「液体の通る直径〇・三五ミリの管を作るのが難しかった。樹脂を押し込まず、金型を真空にして材料を吸い込んだら、うまくいった」と当時のひらめきを語った。

主要部品は埼玉県越谷市の医療機器製造販売ニチリョーの製品に採用され、山中教授はiPS細胞の研究を始めた二〇〇〇年当時から使い続けてきた。ノーベル賞受賞を記念してその研究器具三点はストックホルムのノーベル博物館に寄贈され、三月中旬から展示されている。

区にも同じ種類の器具が贈呈されている。「少しはノーベル賞に貢献できたかな」と笑顔を見せた西村さん。会見ではアイデアマンの一面ものぞかせ、高温樹脂成形により開発した特殊樹脂製のはし「すべら膳」もPR。麺類がすべらない先端部の形状が特徴で、そのネーミングから合格祈願に地元神社からも引き合いがある。

「困っている人がいれば助けたい。そんなモノづくりをしたい」。西村さんは、大田区の町工場の多くに共通する思いを代弁した。

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