再生医療関連セミナー聴講MEMO 5

日本臨床薬理学会 シンポジウム12 

患者の視点から考える再生医療の臨床研究(2013/12/5、有楽町)

 

座長:武藤先生(東大)、田代先生(昭和大)

近年、臨床研究における患者参画の重要性に注目が集まっている。

治験実施時の患者の誤解の回避のみならず、患者の専門知の活用といった多面的なメリットが挙げられる。

 

 

①臨床試験への患者参画について(別府先生、NPOディベックス・ジャパン)

 

そもそも参加と参画は異なる。
参加は募集告知に応じるものだが、参画は試験の実施計画から解析のフェーズまで主体的に関与する。

 

イギリスで臨床試験への参画理由についてアンケートをとった結果、
「自分へのベネフィット」、「医療の発展への貢献」といった、一見相反するような答えが上位に挙がった。
このような患者自身のためのベネフィット、というのはとても重要。

そもそも臨床試験はメディカルニーズよりも市場戦略が優先されてきたと感じる。
不必要な薬剤の開発、不十分な安全性検証、有効性の過大評価、専門家であるがゆえの見落とし、などなど。
研究者が何が重要なReseach Questionなのかを知る上で、患者や一般の参画が非常に役立つだろう。

 

そういったlay personと呼ぶべきひとはすでに国内にもたくさん存在している。
lay personの声を臨床研究に反映させるための策として、
委員会メンバーとなってもらう、患者らの書いた本を読む、
グループ調査によるコンサルテーション、コンセンサス会議の開催などが考えられる。

 

lay person: 聖職者や職業的専門家でない人

http://ejje.weblio.jp/content/lay+person

 

 

②国内の患者団体による臨床試験への関与―日本せきずい基金の事例―(坂井氏、立命館)

 

日本せきずい基金は、再生医療研究推進を目的として設立された脊髄損傷の患者会である。

 

京大・関西医大が、急性期脊髄損傷者を対象に

培養自家骨髄間質細胞移植による臨床試験を実施すると発表した2003年から、

試験が承認される2005年の間に、日本せきずい基金の関与により、懇談会や一般公開セミナーを介して

研究者と患者間、研究には直接関係しない専門家も時には交え討議を重ねた。

 

その中で、リスク認識に関する患者と研究者の認識のずれや、

例え専門家間であっても用語やプロトコルの認識には差があることなどが浮彫になり、

それらの違いを摺合せるように討議を重ね、研究デザインが変えられていった。

また治験実施のインフォームドコンセント文書作成においては患者の意見が大いに反映された。

 

研究者とは異なる視点からのlocal knowledgeの重要性が示唆された事例。

 

 

③患者の臨床研究参画に必要なこと(有松氏、日本網膜色素変性症協会)

 

患者が臨床試験に参画するにあたり、

前臨床研究や研究デザインについての正確な情報をもち、基礎体力をつける必要がある。

前臨床研究について理解することで、臨床試験実施の背景を理解できる。

また、どのような研究デザインが望ましいのかを理解することで、その試験の妥当性を判断できる。

 

患者団体には、情報の収集・共有、研究計画への関与、情報公開の促進という役割が求められる。

実際に本協会では、本年はリーダー研修会を開催し、

臨床試験に参画する場合に必要とされる情報や疑問点の洗い出しが行われた。

 

産官患学の共同事業として難病を克服するために、情報の公開・透明化は必須であり、

患者の主体的な参画と、規制整備などによる被験者保護の仕組みが必要である。

 

 

④iPS細胞を用いた臨床研究と患者の理解(高橋先生、理化研)

 

現在注目が集まっている先端医療研究においては、

通常の臨床試験よりもむしろきっちりと患者の疑問点などを洗い出している、という印象。

やや厳しすぎるくらい?

 

加齢黄斑変性の網膜再生医療研究については、10年以上前から

将来的に非常な注目を受けることを想定し、情報発信のために様々な対策を講じてきた。

例:患者団体での講演会、twitter、ピアカウンセリング、メディア勉強会など

しかしながら、患者の理解は圧倒的に不足している。

 

例えば、加齢黄斑変性の病態以前に、眼球の構造や、視覚のしくみを理解していない。

自分自身の体のことなのだから、例えば中高生の段階から教育が必要なのかもしれない。

 

そして、疾患についても、臨床試験の対象となる病態について正しく理解はされていない。

誰もかれもが試験の対象となるわけではない。ロービジョンの人はロービジョンケアの対象者である。

 

また、再生医療は安全なのか?という漠然とした質問をよく受けるが、

どの細胞を使うのか・どのような手術を行うのか・どの患者に対して行うのか、によっても全く状況は異なってくる。

漠然とした枠組みで安全性を議論すること自体が間違い。

眼科領域だからこその安全性要因も存在する。

 

健全なあきらめの精神が大切。

知識・情報量といった、自分の努力で変わるものは変える努力をしよう、

変えられないものは受け入れる、という姿勢が大切だろう。

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