自由診療で行う再生医療の危険性

通常、新しいもの、便利なものにはリスクや危険がつきものである。新製品には当初、バグやエラーがあるだろうし、ユーザーが知らないうちに徐々にアップデートされているのである。しかし、それが命にかかわる危険となれば、看過することはできない。再生医療は、18世紀後半の産業革命や90年代の情報革命などと並ぶ、人類史上、大きな可能性を秘めるテクノロジーである。しかし、その有効性や副作用は、現在研究段階にあり、地球上でまだ国家として承認している国はない。そのような状況の中で、日本の一部のクリニックでは再生医療もどき(あえて、”もどき”と呼ぶこととする)が自由診療という名のもとに実施されており、患者側からの不安の声が出始めている。

怪しげな「再生医療」が一掃されることを願う

出所:2014-01-15 読売新聞

「新しい規制ができるそうですが、本当に、患者の弱みにつけ込むようなことはなくなるのでしょうか」

兵庫県の女性(69)は、疑いの目を向けます。この女性は昨年11月、脂肪にある脂肪幹細胞を使った「再生医療」を、有効性や副作用の十分な説明がないまま受け、精神的に大きな苦痛を受けたとして、東京都内のクリニックの主治医(当時)らを相手取り、慰謝料など約640万円を求める損害賠償訴訟を起こしました。原因不明の全身のしびれを治そうと受けた再生医療。「自分のような被害者を二度と出さないように」との思いから提訴しました。

クリニック側の弁護士は「医師は説明を十分にした。この再生医療が全員に効果があるとは説明していない」などと言っています。この治療を受けたことが原因かどうか分かりませんが、この女性は、全身のしびれが悪化し、歩行器なしには移動することができません。

実は、このような国の承認を得ず、医師の裁量権のもと、民間クリニックなどが自由診療で行う「再生医療」は国内で広く行われています。彼女が言及した「新しい規制」とは、今秋、施行される「再生医療安全性確保法」に基づく新制度のことです。この制度が実施されると、自由診療で行われている「再生医療」についても、厚生労働省が認めた委員会の審査を受け、厚労相に治療の計画を提出しなくてはならなくなるのです。

新制度が実施されたら、効果不明の「再生医療」は一掃されるのでしょうか。この女性は「国に届け出ずに、こっそり行う医師が現れるかもしれません。そんな医師を、国はしっかり取り締まることができるのでしょうか」と疑問を投げかけます。日本で「再生医療」を受けられなくなったら、海外へ、という流れも出てくるのも心配です。既に、「再生医療」を受けるため中国などに渡った脊髄損傷や脳性まひの患者さんもいます。

私は、高額な治療費を求められる自由診療による「再生医療」の実情を長く取材してきましたが、医師の「良心」を信じるだけでは、必ずしも良い医療は実現できないことを痛感させられました。もちろん、大多数の医師は患者のために寸暇を惜しんで治療にあたっているとは思いますが、そうではない医師もいるのです。やはり、安全性が確保されるシステムを作るしかありません。新しい規制が、その役割を担うのです。

この新制度に魂を入れるべく、再生医療研究者や行政担当者らが現在も努力しています。冒頭の女性の心配が、杞憂きゆうに終わることを願ってやみません。

あえて最後に一言付け加えると、再生医療とは、「治療をしなければ悪化する/著しく治癒しない」ことと、「治療/オペをすることに付随するリスク(代表的なものとしてiPS細胞のガン化など)」からは切り離すことが出来ず、現在の科学技術では、常にリスクを伴う治療法であることを十分に理解することが必要であろう。
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