トップダウンによる地域再生戦略の必要性

地域再生というテーマを小さい部パーツに分けて、それぞれの最適化を個別に行なっていては、地域再生の打ち手は小さくバラバラになってしまいがちだ。まずは部分最適の前に、全体最適を考え、地域再生全体として何をすべきか」と考えることが非常に重要である。

戦後の日本の復興や高度経済成長の時代であれば、日本経済全体が右肩上がりとなり、隣の人と同じことをしていれば、経済の成長率と同じくらいの成長は見込めたであろう。しかし現在のように成熟した社会では、モノが溢れ、成長の機会が年々減っていく一方である。そのような経済状況の中で成長し、更には、地域経済を活性化するためにどのようにすべきか。日本国内における医療、特に再生医療の市場は、高度経済成長期と同様に今後ますます成長することが見込まれおり、この大きな流れを取り込むことこそが、成熟した社会の中での成長の仕方の一つなのではないだろうか。今回の新聞報道のように、「医」をキーワードに、地方のものづくり産地の復活に向けて、産学が連携した動きがまずます加速することを期待したいものである。

繊維産業、再起へ再生医療に光明 福井の業者が織物技術で人工血管

出所:2013-08-22 福井新聞

「機械で絹の人工血管を編めますか?」。5年前、ニット生地製造の福井経編興業(本社福井市西開発3丁目、野坂鐵郎社長)に電話が入った。声の主は、絹を再生医療に応用する研究に取り組む東京農工大の朝倉哲郎教授(63)。同社の高木義秀専務(59)は「できます」と即答。1週間後、太さが違う12個の筒状サンプルを届けた。

現在市販されている人工血管の直径は6ミリ以上。それ以下になると、血栓ができて詰まってしまう。素材のポリエステルやフッ素樹脂に問題があるとみた朝倉教授は、絹の血管を独自に開発。しかし端がほつれるなど、うまくいかなかった。インターネットで検索し繊維産地の本県企業に手当たり次第電話をかけ、同社と出合った。一方、衣料用生地を手掛けていた同社は、約10年前からヨーロッパなどの展示会に出展。海外製との差別化のため、ダブルラッセルという機械で絹を編むことに挑戦していた。機械を使うと絹は切れてしまうが、糸に加工を施すことで課題を克服した矢先の電話だった。

同社の技術は、直径1・5ミリという細い筒を量産することが可能で、しかも緻密(ちみつ)な編み目は、人工血管にうってつけだった。特殊なコーティングをすることで血液が漏れる心配がなくなった。朝倉教授は直径1・5ミリの人工血管を27匹のラットに移植。ほとんどは1年後も血栓ができずに機能した。さらに興味深い現象が起こった。約7割の絹が分解して生体組織に置き換わり、血管が再生されていた。現在は直径3・5、6ミリの人工血管を犬の動脈に移植しデータを収集。数年後の市販化を見据えている。「衣」から「医」へのシフトを図る高木専務は「医療関連の商品は外国産ばかり。品質の高い自社製品を日本だけでなく、アジアの医療現場にも普及させていきたい」と意気込む。

福井県の繊維産業の出荷額は1992年の4995億円をピークに減少。2010年は2306億円(4人以上の事業所)と半減した。技術を持つ福井県企業にとっては、高い品質が求められる医療分野への進出は、一つの生き残り策と言える。朝倉教授は「高齢化によって、再生医療はさらに注目され進化する。繊維技術は非常に重要になる」と話す。県は本年度、医療分野の販路開拓を支援する事業を創設。7月には企業など29団体で構成する「ふくい医療産業創出研究会」を立ち上げた。

政府の成長戦略では、介護や予防サービスも含めた医療関連の国内市場の規模は、現在の16兆円から20年には26兆円になると想定。世界市場は163兆円から311兆円に倍増すると見込む。一方、文部科学省は7月、北陸3県の医療産業連携事業を「地域イノベーション戦略支援プログラム」に採択。「医」をキーワードに、ものづくり産地の復活に向けた産学官の動きが加速している。

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