脊髄損傷:たんぱく質投与で機能回復の治験開始へ

脊髄損傷:たんぱく質投与で機能回復の治験開始へ

出所:2014-06-16 毎日新聞

事故などで脊髄(せきずい)を損傷してから78時間以内に、神経を保護するたんぱく質を投与し、機能回復を目指す新薬の臨床試験(治験)を始めると、岡野栄之(ひでゆき)・慶応大教授(再生医学)とベンチャー企業「クリングルファーマ」(大阪府)のチームが16日発表した。国内で年間約5000人の新規患者の約8割で症状の改善を期待できるといい、安全性を確かめる。

治験は月内に国内2カ所の病院で実施し、2016年10月まで続ける。対象は、重度の急性期患者48人。患者の同意を得て、2班に分けて神経細胞を保護する機能を持った「肝細胞増殖因子(HGF)」か疑似薬を腰から注射する。1週間ごとに計5回投与し、リハビリを続けながら機能回復の効果を比較する。脊髄損傷は外傷による損傷に加え、生き残った神経細胞も炎症で死滅し、運動機能や感覚がまひする。有効な治療薬はない。HGFは炎症を抑制したり、神経や血管の再生を促したりする効果がある。チームは、ラットやサルの仲間マーモセットの実験では、正常の8割程度まで機能が回復する効果を確認した。

脊髄損傷の累積患者数は国内10万人以上で、重い後遺症が残るケースも多い。慶大の中村雅也准教授(整形外科)は「完全に神経が切れていない急性期患者の生活の質を改善する画期的な治療法になる」と話した。今後、慢性期の患者を対象に人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作る神経幹細胞の移植も目指している。HGFを使った治験では、東北大や慶大が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者で始めている。脊髄損傷では、札幌医科大が今年1月、患者から採取した幹細胞を培養し、神経を再生する治験を始めた。今回の方法はがん化の恐れが低く、簡単な方法になると期待される。

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