九大 iPS細胞なしで腸細胞を作製

現在、iPS細胞を介さずに、いくつかの遺伝子の組み合わせによって、脳や神経、肝臓、骨、血液などの直接欲しい細胞を作る研究が世界中で進められている。これは、「ダイレクトリプログラミング」と呼ばれ、2010年に慶応大学とスタンフォード大学の研究チームによって開発された。iPS細胞の作成が必要ないので目的の細胞を短期間に作製することができる技術である。ダイレクトリプログラミングにより、生物学的には絶対に起き得ない進化のプロセスを起こすことができ、さらには、例えば心筋細胞のようにもともと増殖しない細胞の場合は、直接作ってしまえばがん化のリスクはほとんどなくなってしまうと考えられており、臨床応用への期待が非常に大きいとされている。


 

iPS細胞使わず腸細胞、短期間で作製可能に…九大グループ

九州大学の鈴木教授らはマウスの皮膚細胞に遺伝子も加えたところ、腸前駆細胞へと変化したという。腸前駆細胞をさらに培養させると、腸の上皮組織になる腸幹細胞に成長した。ヒトの血管内皮細胞でも同様の実験したところ、腸前駆細胞に変化した。

今回の九州大学の研究グループは、マウスの皮膚やヒトの血管の細胞に4つの転写因子(Hnf4α、Foxa3、Gata6、Cdx2)を導入することで、直接、胎児性の腸前駆細胞へ変化させることに成功した。2011年に成功していたマウスの皮膚細胞から直接肝細胞に変化させた研究結果に対し、追加で新たに2種類の遺伝子を加えたところ、腸前駆細胞へと変化したという。その腸前駆細胞をさらに培養させると、腸の上皮組織になる腸幹細胞へと成長した。同様に、ヒトの血管内皮細胞でも実験したところ、同じように腸前駆細胞に変化したと報告した。今回作製された腸前駆細胞を用いることで、従来よりも簡便かつ効率的に腸の上皮組織を取得できるようになり、まずは生体内への臨床応用ではなく、腸疾患の病態解析や創薬研究への展開が期待される。
 
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