【米】米ジェロン、ES細胞由来の治療薬の臨床試験を打ち切り

【米】米ジェロン、ES細胞由来の治療薬の臨床試験を打ち切り

出所:2011-11-16

ヒト胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使った世界初の臨床試験を実施していた米バイオテクノロジー企業ジェロン(Geron)は15日、高コストのため臨床試験を中止すると発表した。全従業員の38%にあたる66人の常勤職員を削減することも併せて発表した。

 

同社は2010年10月、政府からの助成金を受けずに、脊髄(せきずい)を損傷した患者を対象にES細胞由来の治療薬「GRNOPC1」の臨床試験を開始した。

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安全性の確認を主目的においたフェーズ1の臨床試験には、これまでに4人の患者が参加し、いずれも深刻な副作用は認められなかったが、同社は声明で、「コストの戦略的見直しと複雑な規制」を理由に、「臨床試験への患者の登録を打ち切る」と発表した。

 

ジョン・スカーレット(John Scarlett)最高経営責任者(CEO)は投資家らとの電話会議で、「ES細胞事業からの撤退は苦渋の選択だ」と語るとともに、同社が1999年に始めたES細胞事業は世界的にみても優れていると述べ、この事業に費用を出すパートナーを募っていることを明らかにした。

同社は今後、新しいがん治療薬の開発に重点を置くという。

 

■特許ラッシュが研究自体を困難に

米バイオ企業、アドバンスト・セル・テクノロジー(Advanced Cell Technology)は今年に入って、失明の危険性がある眼病患者と黄斑変性症の患者に対し、ES細胞を使った臨床試験を実施。試験は現在も行われている。

 

同社のゲリー・ラビン(Gary Rabin)CEOはAFPに、「ジェロンの臨床試験は極めてお金がかかる上に複雑だ」と指摘した。「当社の手法ははるかに簡単で単純。眼病患者の場合は、活力に満ちた網膜色素細胞を作製し、目に置くだけ。そうすると死んだ網膜細胞に置き換わることができる」

ES細胞研究を支持する科学者らは、ES細胞を使えばアルツハイマー病から糖尿病まで、多くの難病の治療が可能になると考えている。一方で、ヒトの胚の破壊を伴うことから、宗教の教えに反する、非倫理的だといった反対の声もある。

 

米国のジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前政権はES細胞研究への連邦政府の助成を制限していた。バラク・オバマ(Barack Obama)大統領は2009年にこの制限をなくしたが、この決定をめぐっていくつかの法廷闘争が繰り広げられた。

 

また、ES細胞研究のほぼすべてのステップで特許申請ラッシュとなっており、このことが研究の推進を不可能にしていると指摘する科学者もいる。

 

11月16日 AFP

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