iPS細胞を使いチャージ症候群の病態メカニズムを解明|慶大

ここ一年以内に、表皮水疱症、進行性骨化性線維異形成症(FOP)、バージャー病、脳腫瘍、Blau症候群、NGLY1欠損症、先天性巨大色素性母斑などの、いわゆる難病や希少疾患と呼ばれる疾病の病態が徐々に解明されてきた。今回の慶大の研究グループも同様に、チャージ症候群と呼ばれる、生まれつき目や耳などの感覚器や心臓が正常に機能しない、約2万人に1人という頻度で発症する希少疾患の病態を解明したと発表した。
 

 
これまでチャージ症候群は、約70%の患者さんでCHD7遺伝子の変化がみられ、CHD7遺伝子の機能不全によりお母さんのお腹の中にいる時に様々な症状が作られるとされてきた。今回、同研究グループは、チャージ症候群の患者由来の皮膚細胞からiPS細胞を作り、そのiPS細胞を用いて顔面形成や目や耳などの感覚器形成に重要な働きをする神経堤細胞を作製した。作製された神経堤細胞を詳細に調べたところ、通常の神経堤細胞とは異なり、チャージ症候群の患者由来の神経堤細胞は、一つ一つの細胞へスムーズに分化することができず、また動きも遅いため、神経細胞に遊走障害が発生することが分かった。本件研究は、胎児内でも神経遊走の障害が起こっていることを、実際の胎生期の細胞を直接的に観察することによって確かめられたことは、特筆すべき成果である。

CHARGE 症候群| iPS 細胞技術により病態解明

慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授、奥野博庸助教らを中心とする研究グループは、生まれつき感覚器の障害をもつ CHARGE 症候群の症状が、胎生期の神経堤細胞の遊走障害(細胞の動く速度が遅いこと)が要因となって、障害が現れることを、患者由来ヒト多能性幹細胞(iPS)を用いた疾患モデルにより解明しました。

通常、胎生期に症状が作られる遺伝性疾患はその過程の観察が困難であり、特に、胎生期に密接に関わるとされる病態を解明することは重要な課題となっていた。しかし、今回のようにiPS細胞を介して、チャージ症候群の病態モデルを作製すれば、これまで実現不可能であった「直接的に胎生期の細胞を観察する」ということが可能となる。
 
今後のチャージ症候群に関する研究は、CHD7の機能不全と神経堤細胞の遊走障害に直接関わる因子を見つけ出すことにより、さらに病態メカニズムの解明が進められることになりそうだ。
 
なお現在、国は、iPSを用いて、これまであまり病態解明や創薬が進まなかった難治性・希少性疾患に対する研究を積極的に推進しており、今後も、これまで治療法や治療薬がなかった難病や希少疾患の基礎研究が進め、それらの発症メカニズムが解明されることにより、治療法や予防法の確立につながると期待されている。
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