再生医療関連セミナー聴講MEMO
日本心不全学会 シンポジウム7 再生医療の現状と展望(2013/11/29、大宮)

 

座長:小室先生(東大)、室原先生(名大)
再生医療の中でも相当に難しいとされる心の再生医療について、我が国での研究の進捗状況をご講演いただく。

 

①心筋再生治療の可能性(千葉大、永井先生)
心筋再生治療戦略は、細胞移植のほかに、内在性の心筋細胞の賦活化が挙げられる。

 

心筋前駆細胞(CPC)から分泌されるJAM-Aは、心筋梗塞24時間後の心筋組織内への
好酸球遊走を抑制し、梗塞サイズ縮小効果に関与するパラクライン因子のひとつ。
CPCを移植することによって、心筋梗塞部位を縮小できる可能性がある。

 

また、最近ヒトやマウスで内在性の心筋の新生が確認されており、この現象に
関与する因子のひとつにLIF(leukemia inhibitory factor)が挙げられる。
LIFのような心筋再生因子を同定できれば、内在性の心筋を増やすことができるかもしれない。

 

パラクライン因子:
自己以外の細胞から分泌された、自己に影響を及ぼす因子。
(参照)https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/1453.html

 

②アディポサイトカインと血管病(名大、大内先生)
脂肪組織は従来エネルギー貯蔵組織と考えられてきたが、
アディポサイトカインを分泌する組織であることが明らかになってきた。

 

アディポサイトカインのほとんどは肥満病態を促進するが、中には抑制に働くアディポサイトカインもある。
アディポネクチンは血管新生、リンパ管再生に関与し、強力な抗炎症作用を有する。
オメンチンも血管新生に関与しており、冠動脈疾患群においてオメンチン濃度が有意に低いことから、
血管病のバイオマーカーとなりうることが示唆されている。

 

③心筋再生治療と不整脈(阪大、李先生)
心筋再生医療は、重症心不全においても除脈性不整脈においても、
安全性かつ効率性に実施されるために電気生理学的なアプローチは欠かせない。

 

移植した細胞がペースメーカーの刺激をきちんと伝導するかどうかを検討。
褐色脂肪細胞から分化誘導した円形細胞は刺激伝導の点で有用性が示唆された
また、ラット心を脱細胞化および再細胞化し、興奮を伝播するかどうかを検討した。
内部構造は密度が低いものの再細胞心は拍動した。
しかし、興奮伝播の点では個体によってばらつきが生じていた。

 

④重症心不全に対する細胞シート医療(阪大、澤先生)
臨床フェーズに役立つ再生医療を念頭に研究を進めてきた。
2003年当時ダメ細胞のレッテルを張られていた筋芽細胞を、注射でなくシート化して移植することに着目。

 

移植した筋芽細胞シートは、生体細胞とのサイトカインのやりとりを介して血管配向されたりrenewingされる。
筋芽細胞そのものが増殖するわけではない。

 

細胞シート単独治療はこれまでに15例で実施されてきた。動物実験のときには
明らかではなかったが、臨床試験を通してnon-responderの存在が明らかになってきた
容量が大きすぎる・EF低すぎるなどの超重症例では、治療ベネフィットが得られにくかった。
テルモによる7例の治験が進行中、2014年半ばに申請され、2015年には条件付きで承認されるだろう。

 

また、iPS細胞を用いて構築したシートは、予想どおり筋芽細胞の能力を上回りそうである。
電気生理学的な確認済み。アクチン・ミオシンの重合はSpring-8で確認した。

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