京大・高橋和利先生のご講演
(再生医療イノベーションフォーラム@パシフィコ横浜、10月9日)
・再生医療用にiPS細胞ストック構築中
自家iPS細胞を用いた再生医療には、今の技術をべーすにすると開発に1億円・半年~1年くらいかかってしまう。
しかし、脊髄損傷などの緊急を要する移植の場合、そんなに待ってはいられない。そこで、再生医療用の
iPS細胞のストックを構築している。HLAホモドナーのボランティアの臍帯血を利用。
京大だけではなく、阪大・理研・慶應などでそれぞれの得意な分野で手分けして構築している。
・作製したiPS細胞の品質を評価する系が必要
理想のiPS細胞とされるES細胞をベンチマークとして検討。mRNA発現やDNAメチル化の点では、
シャープなコントラストは得られず。
・iPSよりもESの方が優れているポイント
神経(他の組織よりも誘導効率が良い)に分化させて、残存未分化細胞について比較検討した。
その結果、全体的にES細胞は分化能がよく、iPS細胞では分化能に開きが見られた。
iPS細胞はES細胞よりも分化能に開きはあるものの、ES細胞よりも用意に大量生産できるため、
分化能の質の点は量でカバーできる。一例として、iPS細胞の未分化細胞株(Bad株)では、
イントロン領域にDRRGを有することがわかった。つまり、DRRGをマーカーとして、Bad株を
判別することができる。
・ESよりもiPSの方が優れているポイント
ES細胞は受精卵のため、ゲノムはドナー(父・母)とは一致しない。
ヒト-ヒト間のゲノムは差が大きすぎて参照は難しい。
しかし、iPS細胞は必ずドナーと一致するため、ドナーのゲノム情報が参照できる。
例えば、がん化しやすい性質の有無などを、ドナーのゲノム情報を便りにしてチェックができる。
上記のES細胞とiPS細胞の違いから得られた知見を元に、iPS細胞の品質を評価する系が構築できるかもしれない。