日本臨床薬理学会 シンポジウム29
革新的医薬品・医療機器・再生医療製品・実用化促進事業(2013/12/6、有楽町)
座長:宇山先生(PMDA)、森豊先生(東大)
革新的事業のとりくみについてご講演いただく。
◯再生医療製品の品質・安全性のための科学
(佐藤先生、医薬品食品衛生研究所遺伝子細胞医薬部)
医薬品食品衛生研究所では、医薬品や食品の有効性や安全性の評価、および
それら試験法の構築などを行っている。研究所が支援している中で再生医療に
関しては現在7課題あり、そのうちのいくつかを紹介する。
例1:生育医療センター
(課題)ヒトES細胞の安全性基準についての研究
→研究所・センター・PMDAから相互に人材派遣を行い、研究を推進している。
例2:阪大
(課題1)心、皮膚、消化器、角膜、軟骨など各臓器別のreference paperの作成
(課題2)ヒトiPS細胞の造腫瘍性評価系の構築
→いずれも将来的にGL構築までもっていく。
例3:先端医療振興財団
(課題)品質評価系の構築
問題点
・製品開発のスピードに評価法の開発が追いついていない
・新しい分析ツールが開発されても、医薬品の評価にどのように活かせるのかが不明
・新しいタイプの製品のリスクをどう理解していいのか不明
再生医療に関する課題 例1:造腫瘍形成
そもそものリスクはなにか?
①腫瘍による物理的障害と②悪性腫瘍形成の問題は分けて考える必要がある。
①は不死化細胞の混入を招き、移植後に組織を圧迫する可能性がある。
②はがん細胞の混入を招く。
①のリスクは必ずしもゼロでなくてもよいのではないか。
フォローアップ、外科的除去、化学療法、免疫抑制剤の使用など、
適切なリスクマネジメントプランによって対策もできるのでは?
②の対策として、テクニカルな評価は不可欠。
ES/iPS細胞中の未分化細胞を確認するための高感度検出法の開発を行っている。
再生医療に関する課題 例2:原料(細胞、ウイルス、関連製品)の品質
再生医療製品は作製後に滅菌や精製を行うことは難しいので、原料の品質が非常に重要。
そこで、現在ワーキンググループを立ち上げて、原料基準のあり方について討議を重ねている。
H26年夏頃に制定の見込み。
★まとめ★
先端的製品は、誰にとっても(研究者だけでなく規制側にとっても)先端的なものである。
オープンにサイエンティフィックな議論を早期から行うべきである。各ステークホルダーの
常識の擦り合わせを介して、Principal→Paradigm→Ruleの順に決めていくのがよい。
【フロアからの質問】
オープンな議論に、全く知識のない人が介入してくると混乱を招かないか?
⇒テクニカルなものはある程度専門家の中で議論をするのがよい。
倫理については一般のコモンセンスは早期から重要だと考える。
特別講演2 臨床薬理に期待すること
座長:内田先生(昭和大)
再生医療の実現の重要なカギを握るのは松山先生のチームだと思っている。
再生医療研究はその結果にばかり注目が集まりがちではあるが、支援の重要性を理解し、
臨床薬理学会がどのような形で松山先生たちの働きに貢献できるのかを考えてゆきたい。
演者:松山先生(先端医療振興財団)
これまで救うことのできなかった患者さんを明日は助けたい、という想いで取り組んでいる。
その期待がかかっているのが再生医療。世界の再生医療製品を見ると、日本は2製品、
アメリカは14、韓国は19(仮承認も含む)と日本が遅れをとっているのかのようにも見える。
しかし、日本以外の国の製品は実は皮膚・軟骨に偏っている。一方で日本は心臓や血管といった
世界にはないものに対する臨床研究に取り組んでいる。
真心が医学の源流にある日本だからこそではないか。
再生医療実現拠点ネットワークの取り組みは、臨床展開支援として、PMDAに受理されるレベルの
資料のまとめ方・フォーマットの提供や、実際にCPC実習を行い、各拠点にトレーナーとなる人材を
配置できるよう教育を行っている。再生医療学会でも実習が開始する、2014年以降は様々な学会と
コラボレーションする予定である。
また、非臨床開発支援として、試験プロセスの明確化や、不要な試験の見極め、
試験設定のアドバイス、実験計画書作成の手引きなどを行っている。10年後、
日本は再生医療でもうひとり、今度は臨床研究の点でノーベル賞をとれると思っている。
自分はそのために黒子として頑張りたいと思う。