■ 歯の疾患にはどのような病気/症状がありますか?



歯は死ぬまで一生付き合っていく大切な自分の体の一部です。代表的な疾患として、①むし歯、②歯周病、③顎関節症の3つがあげられます。

 

疾患の種類 疾患の概要
 ① むし歯 虫歯とは、細菌が糖を利用して「酸」を作り、その酸によって歯が溶かされる病気です。
(糖は砂糖だけではなく、ご飯やパンなど、非常に多くの食品に含まれています)
 ② 歯周病 歯周病は歯自体ではなく、歯にとって大切な土台になる歯茎やあごの骨に炎症を起こしたり、組織を破壊する恐ろしい病気です。以前は歯槽膿漏という名前が一般的でした。日本人の成人の80%以上の人が、歯周病だと言われています。
 ③ 顎関節症 「口が大きく開けられない」「顎がコキコキとかギシギシ音をたてる」「ものを噛むと顎が痛む」といった症状は顎関節症の三大症状といわれています。またこの病気は頭痛、首が痛い、肩がこるなど顎以外の所に悪影響を及ぼすことがあるといわれています。

 




■ 虫歯/歯周病の主な治療法とは?



  • 虫歯
      • 虫歯治療は、虫歯の進行段階や欠損範囲などによって治療方法が選択されます。虫歯が神経まで達していない場合は、主に以下の3つの治療法が取られます。
    虫歯の重度 治療法 治療の概要
    小さな虫歯 小さく削ってプラスチックを詰める 小さな虫歯は、削った穴をプラスチックなどで塞げば治療が終わります。型をとる必要もありませんので、治療が1回で済み、通院の負担がかかりません。
    中程度に進行した虫歯 少し深く削って、プラスチックや金属をはめ込む 中程度に進行した虫歯治療は少し深く削ることになります。プラスチックを詰めるだけでは塞ぐことができませんので、歯の型を取って、虫歯を削った部分と同じ形の詰め物(インレー)を作ります。プラスチック(レジン)やセラミック、金属などが使用されます。
    大きく進行した虫歯 大きく削って金属やセラミックを被せる 大きな虫歯や深い虫歯の場合やかみ合わせの状態によっては、はめ込む治療では強度が保てず、被せ物(クラウン)治療となる場合が多くなります。虫歯の箇所以外に歯の周囲も削って土台を作り、歯を覆う被せ物を装着します。治療には数回通う必要があります。

     

    虫歯が神経まで達した(神経を取り除く必要がある)場合は、神経を抜く治療が必要となります。いわゆる根管治療といわれる治療です。

    虫歯の重度 治療法 治療の概要
    神経まで達した重度の虫歯 神経を抜いてから、金属やセラミックを被せる 虫歯を削り、歯の中の神経を専用の器具で取り除き消毒する(神経の炎症状態により、消毒に必要な回数は異なります)。その後、炎症が落ち着いたら神経を取り除いた部分を薬で埋めます。 差し歯の土台を入れるために歯を少し削り、土台を入れたら形を整えて、型をとり、最後に被せ物(差し歯)を入れます。

     

    虫歯が根の部分まで深く進行し、抜歯が必要となった場合、抜いた後の治療法の選択肢は、部分入れ歯、ブリッジ、インプラントとなります。

    虫歯の重度 治療法 治療の概要
    虫歯が歯の根元まで深く進行し、抜歯が必要な虫歯 入れ歯

    ireba

    入れ歯は、保険適応の比較的安価なものから自費の高価なものまで幅広くあります。一般的な入れ歯の場合、バネが目立つ、手入れが大変、口の中で違和感を感じるといった場合がありますが、近年では自費の高品質な入れ歯もあります。

    同上 ブリッジblidge 両隣の健康な歯を削ってしまい、その上にブリッジを被せる治療法です。ブリッジの場合は、土台にした両隣の歯に負担がかかり、手入れを怠ると両隣の歯までダメージを受けてしまうことがあるので、注意が必要です。

    同上 インプラント

    inplant

    人工歯根となるインプラント体を歯を支えている骨に埋め込み、人工歯の支台となる部分を載せ、その上に人工の歯を被せる治療法です。審美的にも違和感なく、まるで自分の歯のように噛む事ができると言われています。但し、外科的な手術となるので、大学病院や経験豊富な専門医で治療することをお奨めします。

     

    歯周病

    一度、歯の周囲の骨を溶かすほど進行してしまった歯周病は、基本的に症状が落ち着くことがあっても、骨が元も位置に戻ることはありません。そのためにできるだけ早期発見、早期治療が大切になってくるのです。また、歯周病は薬では治りません。薬は症状を抑える対症療法のみで、原則は原因をなっている歯周病菌を機械的に取り除く原因除去療法が行われます。治療で取り除くのは、歯周病菌が表面に付着した歯石などです。厳密には、歯石自体の内部は石灰化していて、歯周病菌は活動できないため、ほぼ無害です。しかし、歯石表面は、細かい凹凸があり、その凹凸に生きている歯周病菌などの細菌が付着しているのです。結果的に、歯石ごとすべて取り除く必要があります。

    歯周病の重度 治療法 概要
    初期 スケーリング 初期の歯周病では、歯石の付着している部分が歯ぐきの内面のごく浅い部分に付着しているため、歯石を除去するために用いられる歯科用器具(スケーラー)などを使用して、麻酔なしで取り除きます。
    初期 ~ 中期 ルートプレーニング スケーラーだけでは、取りきれないような歯ぐきの少し深い位置にある歯石を取り除き、さらに歯石が付いていた根の表面を滑沢な面に仕上げます。麻酔が必要な場合があります。
    中期 ~ 末期 フラップ 歯と歯ぐきの隙間に器具を挿入して、歯ぐきの中を、主に手探りで歯石などを取り除きますが、フラップ手術では、麻酔後に歯の周囲の歯ぐきを切開して、歯ぐきの奥の汚れを直視下で取り除きます。




    ■ 再生医療/iPS細胞による歯の治療



    歯の表面はエナメル質でその内側は象牙質で作られています。エナメル質はエナメル芽細胞によって、象牙質は象牙芽細胞で作られるます。近年の研究では、iPS 細胞から象牙芽細胞の特性をもった細胞に分化誘導する技術が開発されました。象牙芽細胞の祖先は外胚葉に由来する神経堤細胞であり,この細胞は歯胚の上皮細胞(エナメル質を作るもとの細胞)とふれあうことで歯胚の間葉細胞(歯を作る結合組織側の細胞)になり,その後象牙芽細胞となることが知られています。

    最新の研究では、iPS細胞を神経堤細胞に分化させ,その後、この神経堤細胞を歯胚上皮細胞と組み合わせて共培養することや、歯胚上皮細胞の培養上清を培地に加えたりすることでこの細胞が象牙芽細胞を含む歯原性間葉へと分化すること、また誘導した神経堤細胞の中からより象牙芽細胞へ分化する能力が強い細胞を見いだして,効率的にiPS細胞から象牙芽細胞へ分化誘導する方法を確立されています。



    (参考資料)


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