再生医療:2法が成立 幹細胞治療を届け出義務化
出所:2013-11-20 毎日新聞幹細胞を使った治療を安全に、迅速に行うための再生医療安全性確保法と改正薬事法が、20日の参院本会議で可決、成立した。政府は再生医療を成長戦略の柱の一つに位置付けている。美容目的や病気の治療をうたい効果が不確かな幹細胞治療が自由診療で広がることに規制をかける一方、企業参入や産業応用に向けた環境を整える狙いがある。
再生医療安全性確保法は、幹細胞を使った治療を実施する全ての医療機関に、国が認定する機関による審査と国への届け出を義務付ける。治療に使う細胞の種類や投与の方法などから人体に及ぼす危険性を3段階に分け、実施手続きを定める。国に無届けで幹細胞などを使った再生医療を実施したり、届け出に虚偽の記載があったりした場合は行政指導や罰金を科すことができる。国は医療機関からの報告を基に、実施件数や健康被害に関する情報を公表する。
改正薬事法は、「医薬品医療機器法」に名称変更。人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを使った再生医療製品を早期に普及させるため、少ない症例でも治験で安全性を確認できれば条件付きで承認し、有効性の検証は市販後の実施を認める。治験から実用化までの期間を、従来の制度の半分程度に短縮できるようになるという。医療機関が患者から採取した細胞の培養や加工を、企業に委託することも可能にした。
◇国認定の委員会、審査の質に課題
再生医療安全性確保法成立の背景には、効果や安全性が不明な幹細胞治療が医師の裁量で広がり、トラブルが起きても国が実態把握すらできなかったことへの反省がある。昨年、福岡市内のクリニックが、来日した韓国人患者に幹細胞治療を実施していたことが毎日新聞の報道で明らかになった。規制がない日本が外国人患者向け医療ビジネスの受け皿になっている現状に対し、規制の網がかけられる意義は大きい。ただし、規制の仕組みや運用面に不安が残る。同法案によると、幹細胞を治療に使う医療機関は、国が認定する委員会に実施計画を提出し、審査を受けることを義務付けた。厚生労働省は全国10〜15カ所に認定委員会を置くことを想定するが、再生医療や医療倫理に詳しい人材は少ない。審査の質と公正性の担保に課題が残る。