宮崎大学・理研、ヒト型iPS細胞の品質改善に成功
出所:2013-08-06 QLife Pro宮崎大学・理研、JSTさきがけの成果
宮崎大学(宮崎県宮崎市)と理化学研究所(埼玉県和光市)は、ヒト型iPS細胞を質の高いマウス型様細胞に変換し、目的細胞へ分化誘導しやすくする技術を開発したと、8月1日発表した。
宮崎大学テニュアトラック推進機構の本多新准教授(理化学研究所バイオリソースセンターBRC客員研究員兼任)、理研BRC遺伝工学基盤技術室の小倉淳郎室長、科学技術推進機構さきがけ「iPS細胞と生命機能」らによる研究成果。7月23日、The Journal of Biological Chemistry オンライン版に掲載されている。
分化多能性が高い「マウス型」へ
iPS細胞は、ヒトから樹立される「ヒト型」と、マウスなどから樹立される「マウス型」に分けられる。マウス型はキメラ個体の作出や生殖細胞への分化能力が高く、分化に多くの制約があるヒト型iPS細胞の「マウス型」への変換が求められている。
今回発表されたのは、ウサギの胃と肝臓から樹立した「ヒト型」iPS細胞に、山中因子の一つであるOCT3/4遺伝子を過剰発現させ、細胞培養環境を変化させることで、「マウス型様」のiPS細胞に変換させることに成功した、というもの。このマウス型様iPS細胞は、神経(オリゴデンドロサイト)への分化誘導効率も有意に上昇し、ES細胞でも誘導が困難な成熟オリゴデンドロサイトへの分化にも成功した。これにより、分化能力の低いiPS細胞から、分化効率の高い細胞への変換が可能なことがわかった。
iPS細胞の長き道のり
夢の万能細胞ともよばれるiPS細胞だが、胚から樹立されるES細胞の方が質的に高いとも言われている。これらの細胞は分化誘導後の利用に多くの期待が寄せられており、生殖細胞をはじめとしたより多くの細胞へ分化できるような質の向上が今後の課題でもある。今回、山中因子OCT3/4の過剰発現による分化能向上が可能となったが、まだiPS細胞に不安定要因があるともいっている。
ヒトの「ヒト型」iPS細胞をマウス型様にできるのか、その分化誘導性を同様の方法で高められるのかなど、一歩ずつではあるが、iPS細胞の実用化に向けて多くの研究が展開されることが期待される。(長澤 直)