幹細胞使い乳房再建、民間病院で初の臨床研究へ

幹細胞使い乳房再建、民間病院で初の臨床研究へ

出所:2013-08-24 読売新聞

神奈川県鎌倉市岡本の湘南鎌倉総合病院は21日、乳がんで切除した乳房について、患者本人の幹細胞を使って再建する治療の臨床研究を始めると発表した。

 厚生労働省が2010年に示した「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に基づく研究。鳥取大病院(鳥取県米子市)に次いで全国2番目、民間病院では初めてという。幹細胞は、特定の細胞に変化したり、自己を複製したりする機能がある。厚労省研究開発振興課によると、幹細胞を使った臨床研究は全国で86件認められており、角膜や心臓、肝臓などの治療に応用されている。

 同日、記者会見した湘南鎌倉総合病院で臨床研究の統括責任者を務める形成外科・美容外科の山下理絵部長によると、乳房の再建手術は、乳がんにより乳房の部分切除をした患者が対象となる。本人の腹部や太ももに太さ3ミリのカテーテルを入れて200~520ccの皮下脂肪を採り、特殊な装置で幹細胞約5ccを抽出する。その後、幹細胞と脂肪細胞を洗浄し、切除した部分に一緒に注入する。手術にかかる時間は、おおむね半日。1泊2日、もしくは2泊3日の入院で対応でき、患者の体力的な負担は少ないという。

 乳房再建には、脂肪細胞のみを移植する方法もあるが、手術後に正常に機能している割合を示す生着率が10~40%と低く、壊死えしや肉芽腫といった合併症を引き起こすなど課題が多かった。一方、幹細胞を使うと脂肪細胞そのものを作り出すほか、血管の再生も促す。このため、生着率は70~80%に上がり、合併症になりにくいメリットがあるという。

 同病院では山下部長ら医師2人、患者の相談を受ける看護師2人、検査技師の計5人でチームを作り治療にあたる。山下部長は「乳がんの手術を受けた女性は、胸のことで悩んでいても打ち明けられない人が多い。気軽に治療の相談をしてほしい」と呼びかけている。

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