ES細胞から精子の元づくり改良 京大、効率化に成功
出所:2013-08-05 asahi.com【鍛治信太郎】ES細胞(胚〈はい〉性幹細胞)を精子の元になる細胞に変える方法を改良し、より速く効率よくつくることに京都大のグループが成功した。精子や卵子がどうやってできるかを解き明かす手がかりになるという。英科学誌ネイチャーの速報電子版で5日発表する。
京大の斎藤通紀(みちのり)教授らは一昨年、マウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞から精子をつくったと発表した。この方法では、ES細胞をまず、「エピブラスト」(胚体外胚葉)と呼ばれる細胞に変化させる。この細胞から、精子や卵子の元になる始原生殖細胞になる率が、10%程度から、今回約80%に上がった。さらに、始原生殖細胞をつくる期間も6日程度から約半分に縮めた。
始原生殖細胞をつくる際、これまでは成長因子という情報伝達物質だけを加えていたが、3種類の遺伝子を直接細胞の遺伝子に入れて働かせたのが効いた。この始原生殖細胞からこれまで同様に正常な精子をつくることができた。
成長因子はこの三つの遺伝子を働かせる引き金になると考えられる。ES細胞のような万能細胞を特定の遺伝子で生殖細胞に変えられることがわかったのは初めてという。斎藤さんは「必要な遺伝子を絞り込んだことで、今後は人間やマウスで生殖細胞がどのようにできるのかについての解明を進めたい」と話している。