“ヒトの脳組織 作り出すことに成功”
出所:2013-08-29 NHK NEWSWeb体のさまざまな組織になるiPS細胞とES細胞から、大きさが最大で4ミリほどのヒトの脳の組織を作り出すことに、イギリスなどの研究グループが成功しました。複雑な構造をもつヒトの脳の組織が出来たのは世界で初めてで、研究グループでは、脳の病気の解明などに役立つとしています。
イギリスとオーストリアの研究グループは、さまざまな組織になるヒトのiPS細胞とES細胞を、それぞれ神経の元となる細胞に変化させたあと、ゼリー状の物質の中に入れ4日間、培養しました。そして、別の容器に移して培養液と一緒にゆっくりとかき混ぜる作業を続けたところ、それぞれ脳の組織が形づくられ2か月後には、最大で4ミリほどの大きさにまで成長したということです。
出来た脳の組織は、ヒトの大脳皮質のように神経細胞の層が重なり、記憶をつかさどる海馬の細胞や目の網膜の組織も含まれていました。また、研究グループでは、脳が生まれつき小さい「小頭症」の患者からiPS細胞を作り出し、同じように脳の組織にしたところ病気の状態を再現することもできたとしています。
ヒトの脳の病気は、マウスなどの動物では症状を再現することが難しく、脳の病気の解明を進めるうえで障害となっていました。
研究グループでは、「人工的に脳の組織を作れるようになったことで、病気の解明や脳が形づくられるメカニズムの研究に大きく役立つ」としています。
この成果は、29日発行のイギリスの科学雑誌「ネイチャー」の電子版に掲載されます。脳の再現に向けた第一歩
iPS細胞の研究に詳しい慶應義塾大学の岡野栄之教授は、「血管がないなど、脳を完全に再現したわけではないが、複雑なヒトの脳を解明していくうえで大きな一歩だ」と話しています。