再生医療テーマにセミナー、iPS細胞の成果を報告/横浜
出所:2013-10-12 カナロコ京浜臨海部国際戦略総合特区を拠点に研究開発が加速している人工多能性幹細胞(iPS細胞)技術を活用した再生医療の産業化をテーマにしたセミナーが11日、横浜・みなとみらい21(MM21)地区のパシフィコ横浜で開催され、企業や大学関係者ら約250人が参加した。特区推進を担うライフイノベーション地域協議会(金澤一郎会長)の主催。第一線で活躍する研究者や事業者が、最新の成果を報告した。
金澤会長は「再生医療は本当にニーズが高く、今後、大きな市場になることは明らか。研究者、企業、評価機関など特区には産業化に必要なすべてのものがそろっている」と、着実に進む特区形成に期待を込めた。
特区の殿町3丁目地区(川崎市川崎区)の実験動物中央研究所(実中研)と共同で、iPS細胞を使い脊髄損傷の治療法開発に取り組んでいる慶応大学の岡野栄之教授は、新たな研究テーマとして注力しているアルツハイマー病の治療薬開発の進展状況を説明。「患者のiPS細胞から作製した神経細胞によって、アルツハイマー病が発症するメカニズムが明らかになった。安全性を絶対的に確保しながら、新薬開発へ向け産学協同で研究開発を加速させたい」と意気込みを語った。
臓器再生の実用化を進める横浜市立大学大学院の谷口英樹教授は、iPS細胞から肝臓の元になる「肝芽(かんが)」を作り出し、人の肝臓に成長、機能させる臨床前実験を紹介。iPS細胞を培養し創薬応用を事業化したリプロセル(横浜市港北区)の横山周史社長は「再生医療を産業化するためには新たなビジネスモデルを作る必要がある。そのためには病院、大学、企業の連携が重要になる。海外の関係機関との連携も大切で、その点、特区は羽田空港に近いので優位だ」と述べた。
このほか、日本医療政策機構の宮田俊男エグゼクティブディレクターは、安全性と有効性のバランスを取りながら再生医療の実用化を推進するため、研究機関、評価機関、企業がコミュニケーションを密にすべきだと指摘した。