iPS細胞:臨床騒動 森口氏「成果」記事に誤り 4本不正、疑い濃厚1本
出所:2013-10-31 毎日新聞人工多能性幹細胞(iPS細胞)の臨床研究をしたと発表した森口尚史氏(東京大を懲戒解雇)について、東大は9月下旬、森口氏が東大在籍中に発表した実験に関する論文14本を不正と認定しました。これを受け、毎日新聞は改めて森口氏の「研究成果」を報道した5本の記事を検証し、4本の内容に誤りがあり、残り1本についても誤りの疑いが濃厚との結論に至りました。
森口氏は1999年8月〜2010年1月、東大の先端科学技術研究センターに特任教授などの肩書で在籍、その後は東大病院に特任研究員などとして在籍していました。このため東大は、在籍中に発表した論文などの内容を調査してきました。
東大は、森口氏に実験を行った証拠となるデータや実験ノートなどの提出を求めましたが、森口氏は応じませんでした。東大は「森口氏が説明責任を果たさないことは証拠隠滅または立証妨害である」として14本すべてを不正と認定しました。
毎日新聞が報道した森口氏の「研究成果」は、(1)09年7月9日朝刊「肝がん細胞からiPS細胞」(2)09年9月2日朝刊「肝がん細胞大半を正常化」(3)10年2月24日朝刊「薬品投与でiPS細胞」(4)12年2月22日朝刊「肝臓がん薬に糖尿病薬」(5)12年8月4日朝刊「卵巣凍結でがん治療後妊娠」です。
東大が不正と判断した14本の論文と、これらの記事内容を突き合わせたところ、記事(1)(3)(4)(5)の内容と重なる論文6本が含まれていました。
(2)は学会発表する予定と報じましたが、合致する論文が確認できませんでした。(1)(3)とテーマ、手法、発表時期が近い研究であるため、(2)についても裏付けがない可能性が高いと判断しました。
また、12年10月16日朝刊で報告した通り、いずれの記事も、森口氏の肩書を「米ハーバード大」の「研究員」や「客員講師」と誤って記事化しています。これらの誤りは、記者がその時々の森口氏の説明を信用し、ハーバード大への確認を怠った結果でした。毎日新聞はこうした報道を反省し、再発防止を図るため、確認作業を徹底させるなど科学報道のあり方を見直し、既に実施しています。