再生医療の都市間競争激化

下記記事の通り、都市の再生医療研究拠点の誘致が続いている。再生医療のような次世代産業の場合、関連企業や関連機能を集積し、相互にネットワークを構築して、効率的な研究開発を推進することができるだろう。また、その結果として、地域の外からもヒト・モノ・カネを引き付けることができ、地域経済の活性化にもつながるだろう。

川崎市の臨海部に再生医療研究拠点

出所:2013-09-06 日経新聞

神奈川県は、生命科学分野の総合特区に指定された川崎市の臨海部に、再生医療関連の研究開発(R&D)拠点を新設する。2016年度に開設し、ベンチャー企業や研究機関の入居を見込む。再生医療分野では、神戸市も開発拠点用地を提供するなど誘致をめぐる地域間競争が激化。空港に近い利便性を生かし県主導で施設整備を進め、誘致合戦を有利に進める。

施設の名称は「ライフイノベーションセンター(仮称)」。羽田空港の対岸にある「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」の殿町地区に建設する。延べ床面積は1万6000平方メートル。8000平方メートルの用地を県が取得、民間に無償で一定期間貸し出す。建設費用は民間事業者が負担し、入居企業や研究機関からの賃料でまかなう。今年度中に施設を整備・運営する事業者を公募して決定し、14年度に工事に着手する。県は9月補正予算案に土地取得費用や業務委託費用として計16億円を計上した。

黒岩祐治知事は「県主導の再生医療拠点としたい」としており、再生医療を中心とした特区として、研究成果を実用化する場が期待されている。レンタルラボやオフィスを整備して生命科学関連のベンチャー企業を集積。再生医療の技術を使った診療所も開設し、研究成果の臨床現場での活用も促す。施設内には再生医療に必要な細胞やワクチンの培養装置のほかクリーンルームも整備する構想。医療機器メーカーが試作品を製造できる施設とする。

殿町地区はいすゞ自動車の工場跡地。多摩川を挟んで羽田空港の対岸にあり利便性が良く、製造業に代わる新産業の誘致・育成が京浜工業地帯の課題となっていた。すでに川崎市が隣接地に産学連携の研究施設「ものづくりナノ医療イノベーションセンター(仮称)」を14年度に開業、東京大学や国立がん研究センターなどが入居する予定。さらに米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の研究・研修施設の開設も決定している。医療産業などの誘致をめぐっては神戸市が企業集積の推進やiPS細胞を使った新薬開発拠点を計画しているほか、京都市も生命科学分野の企業・研究機関の誘致を進めている。神奈川県も参加した環境整備で、こうした都市間競争を有利に進めたい考えだ。

この記事で紹介されているような、再生医療の都市間競争には上記のようなメリットがある半面、国家の人的・物的資源が分散するという側面も有している。グローバリゼーションが進展する中で、再生医療という分野は国家間競争が特に熾烈な分野であることに鑑みると、再生医療研究についての資源の集中・分散は、中央と地方が一体となった国家戦略として検討すべき課題であるという見方もできよう。
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