タカラバイオ/経済産業省「再生医療等産業化促進事業」に関する委託契約締結
出所:2013-09-17 タカラバイオ株式会社経済産業省が公募した平成 25 年度「再生医療等産業化促進事業」において、当社の申請事業である、「MAGE-A4・TCR 遺伝子治療プロジェクト」および、「HSV-TK 遺伝子治療プロジェクト」が事業採択され、本年9 月12 日付けで経済産業省と委託契約を締結しました。
再生医療等産業化促進事業は、市場の急速な拡大が予想される再生医療製品の実用化基盤整備のため、安全性、有効性等に関する合理的な評価手法を開発することを目標としています。当社は本事業を通じて、当社が開発を進めている遺伝子改変Tリンパ球の再生医療製品としての認可に必要となる、安全性や有効性に関する評価手法の開発に取り組むとともに、改良技術の発見や技術革新などにより、製造工程や原材料の変更が必要となった際の、変更の前後での同等性を証明するための評価手法についても、開発を進めて参ります。
当社の実施事業に関する委託契約概要は以下の通りです。
委託元:経済産業省
実施内容:2種類の遺伝子改変Tリンパ球(MAGE-A4・TCR遺伝子改変Tリンパ球、HSV-TK遺伝子改変Tリンパ球)における、
① 安全性・有効性に関して承認までに必要とされる試験項目/規格の検討
② 原材料(培地成分、生成用原料、リンパ球刺激成分等)の変更に伴う同等性を証明するための評価
③ 製造工程の変更に伴う同等性を証明するための評価
委託期間:平成25年9月12日から平成26年3月31日
委 託 費:94,006,500円(税込)なお、本契約締結による当社連結および単体の平成26年3月期上期業績への影響はありません。平成26年3月期通期業績へは営業外収益の増加要因となりますが、通期業績への影響につきましては、他の要因も含めて精査を行い、11月1日に発表予定です。当社は、固形癌を対象としたMAGE-A4・TCR遺伝子治療プロジェクトを、日本において平成25年度中に第I相臨床試験を開始すること、造血器性悪性腫瘍を対象とするHSV-TK遺伝子治療プロジェクトは、平成27年度中の日韓共同治験の開始を目標としております。
【語句説明】
再生医療製品
再生医療とは、ヒトの細胞・組織を取得・加工して移植することで、損傷を受けた生体機能を回復させる医療のことで、現在、日本における薬事法の製造承認取得済みの再生医療製品は、自家培養表皮など2製品のみです。政府は、改正薬事法、および再生医療等安全性確保法案からなる、再生医療関連法案を閣議決定し、再生医療製品の早期承認制度の実現、細胞の培養加工の外部委託実現、再生医療の特性を踏まえたリスクに応じた安全性の担保の仕組み作り、などの再生医療の早期普及及び産業化を目指しています。
MAGE-A4・TCR遺伝子治療
TCR遺伝子治療は、がん患者から採取したリンパ球に、がん細胞を特異的に認識するTCR遺伝子を体外で導入し、培養によって増殖させた後に輸注により患者に戻す治療です。TCR遺伝子が導入されたリンパ球が、患者の体内において、がん細胞を特異的に認識して攻撃し、消滅させることによりがんを治療します。当社は、MAGE-A4、NY-ESO-1、WT1等のがん抗原特異的TCR遺伝子治療の臨床開発を推進しています。MAGE-A4抗原は、がん抗原の一つで、食道がんや頭頸部がん、卵巣癌、悪性黒色腫等での発現が確認されています。
HSV-TK遺伝子治療
当社は、イタリアのMolMed社よりライセンスを受け、造血器悪性腫瘍を対象として、国立がん研究センター等と共同で、HSV-TK遺伝子治療の臨床開発を推進しています。現在、造血器悪性腫瘍の治療法の一つとして、ドナーリンパ球輸注(DLI)療法が行われていますが、副作用として生じる移植片対宿主病(GVHD)が重大な問題となっています。本治療は、このGVHDを沈静化する手段を備えたDLI療法により再発造血器悪性腫瘍の治療を試みるものであり、レトロウイルスベクターを用いてHSV-TK遺伝子が導入されたドナー由来リンパ球が被験者に投与されます。GVHDが発症した際には、ガンシクロビルという薬剤を投与し、導入されたHSV-TK遺伝子の働きによってドナー由来のリンパ球のみを消滅させ、GVHDの沈静化を図ります。
(ご参考)経済産業省ホームページ
平成25年度「再生医療等産業化促進事業」の採択結果について
http://www.meti.go.jp/information/publicoffer/saitaku/s130812002.html