iPS細胞で創薬 京大・東大VB、止血剤18年にも量産

iPS細胞で創薬 京大・東大VB、止血剤18年にも量産

出所:2013-05-02

京都大学と東京大学の研究グループが設立したベンチャー企業があらゆる細胞に変化するiPS細胞を使い止血剤の生産に乗り出す。年内にも生産技術を確立し2015年に臨床試験(治験)を実施。18年にも日米での販売を目指す。止血剤を安定供給し、ウイルスなどの感染リスクを減らす狙い。iPS細胞をもとに開発した医薬品を大量生産する世界初のケースとなり、創薬分野へのiPS細胞の活用が広がりそうだ。

外科手術などに用いられる止血剤は、献血で得た血液を原料とする「血液製剤」の一つで、提供者から病原体が混入するリスクが常にある。血液製剤は過去には「薬害エイズ」や「薬害肝炎」などの問題が起きた。その後日本も安全対策を進めたが、血液製剤の投与による感染症の発生は絶えず、未知のウイルスの感染リスクも残る。献血頼みのため血液の安定確保も課題だ。
京大と東大の研究グループが共同で設立したバイオベンチャー、メガカリオン(東京・港、三輪玄二郎社長)は、iPS細胞を使い止血剤の品質向上などにつなげる。まずiPS細胞を止血剤の主要成分である血小板を作る細胞に変化させる。次にその細胞を無限に増殖させて血小板を大量生産する仕組みだ。iPS細胞を使えば献血に頼ることなく、止血剤の主要成分の血小板を製造でき、止血剤の量の確保につながる。献血経由のウイルス混入リスクも抑えることができる。同ベンチャーは年内に京大内に研究施設を新設。米食品医薬品局(FDA)と厚生労働省の認可を得て、15年以降に日米で治験を実施。安全性や効果が証明できれば、18~20年をメドに両国で実用化する。iPS細胞は、これまで再生医療分野での研究が進んでいた。理化学研究所は失明の可能性がある難病、加齢黄斑変性の臨床研究に乗り出す。今後、創薬分野でも応用が活発化する見通しで、iPS細胞を使った輸血製剤などの開発が進む方向だ。薬剤の副作用の有無などをiPS細胞から作った臓器細胞で確認し、迅速な新薬開発につなげることも期待されている。
政府もiPS細胞など先端医療の実用化に向け、「大胆に規制・制度を見直していく」(安倍晋三首相)方針。今の通常国会で、実用化を促すための規制法案と薬事法改正案を提出し、最新の医薬品を早期に承認できる仕組みを導入する。医療分野の研究開発の司令塔として米国の国立衛生研究所(NIH)をモデルにした「日本版NIH」を来年度に創設する方針だ。

 

2013/5/2 日経新聞

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