iPSで膵島移植を研究 京大・山中教授
出所:2014-02-02 京都新聞京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授が1日までに京都新聞社のインタビューに応じ、iPS(人工多能性幹)細胞を使った研究所の第3の臨床研究として、糖尿病治療のため、膵島(すいとう)の移植を目指す考えを明らかにした。ヒトiPS細胞から膵島を含んだ膵臓(すいぞう)の特徴を持つ立体的な組織の作製に成功しており、実施数が少数にとどまっている膵島移植の普及が期待される。
研究所は、パーキンソン病患者への神経細胞と重症貧血患者への血小板をそれぞれヒトiPS細胞から作製して移植や投与をする二つの臨床研究を計画している。山中教授は「膵島ができれば、そこから先の移植の技術は既に完成している。非常に大きな期待をしている」と述べた。膵島移植は、血糖値を下げるインスリンを分泌できない「I型糖尿病」の患者が主な対象。国内では2004年に京大医学部付属病院が心臓死した人の膵臓から、膵島を分離して初めて実施した。昨年10月には脳死と判定された人からの移植も行われたが、京大病院での実施は心臓死と脳死で計21例にとどまる。
iPS細胞研究所の川口義弥教授のグループは、膵臓の構成組織の一つで消化酵素を出す外分泌組織が、膵島の機能性を保つことを突き止めている。ヒトiPS細胞から作製した膵臓に似た組織について、動物実験などで機能を確かめる。iPS細胞から膵島を作る研究は世界で進んでいるが、機能的な膵島ができたという報告はほとんどない。川口教授は「膵島移植は複数回の移植が必要になることが多い。iPS細胞を使えば膵島を安定的に供給できるようになる」と話している。