東京女子医大・大和雅之教授「10年以内に臨床研究」、慶応大・岡野栄之教授「慎重な検証が必要だ」
出所:2014-02-10 MSN産経ニュースSTAP細胞の意義や臨床応用の可能性について、共同研究者である東京女子医科大の大和(やまと)雅之教授(再生医療)、iPS細胞を使った治療を目指す慶応大の岡野栄之(ひでゆき)教授(再生医学)に聞いた。
東京女子医科大・大和雅之教授
--今回の意義は
「細胞が刺激によって初期化される機構を持つことの発見で、教科書を大幅に書き換える成果だ。生物の進化の過程で獲得した機能のうち、不必要なものは排除され、必要なプログラムが残っている。刺激による初期化は、生物が生存のため環境に適応するという進化的意味がある」
--生物学への影響は
「未解明の生命現象が解決する可能性がある。例えば、がん細胞の根源とされるがん幹細胞は、突然変異とストレス(刺激)の組み合わせでできるのかもしれない。生物学に与えるインパクトや波及効果はiPS細胞より大きい」
--共同研究を振り返って感じることは
「刺激で万能細胞が作れるというアイデアは、ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授と私が2010年にそれぞれ独立に思いついたことだが、小保方さんのように一生懸命やる人がチームに加わらなかったら、今回の発見は数年単位で遅れていたと思う」
--臨床応用の見通しは
「iPSは腫瘍ができる課題が解消されていないが、STAPはできにくい。検証は必要だが、再生医療にとっての意義は非常に大きく、臨床に向けた研究はかなり速く進むだろう。今後、世界中で再現実験が行われ、ヒトに移植する臨床研究が10年以内に始まるのではないか。iPSなどの研究で得られた蓄積もあり、一日も早く臨床に使えるようになればと思う」慶応大・岡野栄之教授
--STAP細胞の成果をどう見るか
「核移植、遺伝子導入に続く第3の初期化と多能性技術として発展する期待を示したのは大きな成果だ。ただ、再生医療に応用できるかは慎重に検証しなければ何とも言えない。まだマウスで報告された段階で、医療応用における有用性を判断するのは時期尚早だ」
--今後すべきことは何か
「同じ条件で刺激を与えれば、誰でもSTAP細胞を作ることができるのかどうか、再現実験で確かめる必要がある。われわれも先週から着手した。数カ月もすれば検証結果が出てくるだろう」
--その次の課題については
「本当にサルやヒトでもできるのか、再生医療向きの細胞なのかを確かめなければならない。マウスではがん化しにくいとされているが、その証明も必要で、ヒトでもそう言えなければならない」
--STAP細胞の分化能力をどう評価するか
「複数の細胞の塊として胎盤を含む万能性が示されたが、単一の細胞で万能性を持つかどうかも検証すべきだ」
--移植せずに体内で再生医療を実現できる可能性は
「理論的にはあるかもしれないが、生物の体はさまざまな刺激を受けているにもかかわらず、なぜ恒常性が保たれているのかという疑問もわく。実現できるかすぐには分からない」続きの記事はコチラ