ヒトiPSからミニ肝臓=肝不全マウスに移植、生存率向上-横浜市大
出所:2013-07-04 時事通信社ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)や血管のもとの細胞などから小さな肝臓を作り、肝不全のマウスに移植して生存率を大幅に向上させたと、横浜市立大の谷口英樹教授(49)らが3日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。
ヒトの万能細胞から十分に機能する臓器が作られたのは世界初。移植外科医で肝臓のドナー(提供者)不足に悩んできた谷口教授は、「肝臓はもともと再生能力が高く、10年以内に患者に応用できると思う。特に劇症肝炎の新生児の命を救える効果が大きい」と話している。万能細胞は試験管内でさまざまな種類の細胞に変えることができるが、血管網がある立体的な臓器を作ることは難しかった。
谷口教授や武部貴則助手(26)らは、胎児の臓器が形成される過程をまねる技術を開発した。ヒトiPS細胞を肝細胞の前段階まで変えた後、血管を生み出す「血管内皮細胞」や細胞同士をつなぐ「間葉系細胞」と一緒に培養すると、数日で直径5ミリ程度の肝臓ができた。これを肝不全マウスの腹に移植すると、血管がつながって機能するようになり、1カ月後の生存率が大幅に向上した。
試験管内で肝臓をこれ以上大きくするのは難しい。肝機能が低下した患者に応用する場合は、門脈(太い静脈)に質の高いミニ肝臓を多数注入し、肝臓に送り込んで成長させる方法が有力で、コスト削減が課題という。培養段階で肝細胞に変化しないiPS細胞が交ざっているとがんの原因になるため、安全性を確保する技術開発にも取り組んでいる。マウス実験では移植後2カ月で発がんはみられなかった。