再生医療の国内市場規模は、1.1兆円?1,100億円?

再生医療の市場規模の推計は、前提条件や算出方法による違いなどにより各調査会社が発表している数値は大きく異なる場合があるので注意が必要である。シードプランニング社が経済産業省から委託されてとりまとめた「再生医療の実用化・産業化に関する報告書(平成25年2月)」では、国内の再生医療関連市場は2020年に950億円、2030年に1兆円、2050年に2.5兆円になると推計されて、この数字を元に国内では活発な議論が行われることが多かった。
 
しかし、各再生医療製品の開発状況の遅れやメーカー各社の参入状況を鑑みると、再生市場の立ち上がりが当初の調査会社の見込みより遅れている、もしくは、そこまで実際には成長しないのではないか、という声を耳にすることもある。シードプランニング社の2016年の報告(「再生・細胞医療研究の現状とビジネスの展望(2015)」)によると、2015年時点での再生医療市場規模は、約140億円と推計され、その約9割が「がん免疫細胞療法」や「美容領域」等の保険外診療であり、2030年には急拡大し、2015年の140億円からその約80倍の約1.1兆円に急成長すると予測している。

富士経済再生医療レポート2017
出所:富士経済「ティッシュエンジニアリング関連市場の最新動向と将来性 2017」

 

再生医療市場の最新動向と将来性

株式会社富士経済は、研究だけでなく治療での活用も広がりをみせるティッシュエンジニアリング関連市場を調査し、その結果を報告書「ティッシュエンジニアリング関連市場の最新動向と将来性 2017」にまとめた。この報告書では、再生医療等製品5品目、細胞2品目、細胞培養施設/サービス5品目、セルカルチャーウェア/試薬10品目、細胞培養/イメージング機器17品目、人工生体材料用補填材2品目、計41品目の市場の現状を調査・分析し、将来を予測した。

再生医療等製品は、培養軟骨、培養皮膚、心筋シート、今後発売が期待される細胞シートの各品目とも拡大するとみられるが、けん引するのは細胞性医薬品である。細胞性医薬品は治験段階の製品も多く、脳梗塞や脊髄損傷などの、既存の治療法では不可能であった難病の根本治療が可能になると期待されており、2030年には500億円と急拡大する。それにともない、再生医療等製品市場も2016年比32.2倍の611億円が予測される。今後、細胞治療や再生医療の普及、細胞培養受託ビジネスの成長、三次元培養ニーズの増加などに伴い、ティッシュエンジニアリング関連市場は拡大し、2030年には1,500億円超が予想される。

一方で、今回の富士経済による市場予測では、前出のシードプランニング社の予測よりも低めの市場予測になっている。同社の予測では、各再生医療製品の売上は代替治療や生命に関わらない製品の売上はやや低めに見積もられ、既存の治療法では根本的な治療法のない難病である、「脳梗塞」や「脊髄損傷」などの製品を中心に、2030年に国内市場は約500億円に急拡大し、それにともない再生医療等製品の国内市場も2016年比32.2倍の611億円になると予測され、上述のシードプランニング社の予測の約1/10となっている。
 
一般的に、再生医療の市場予測は楽観的なものが多いが、実際にはバイオテクノロジー技術の研究開発状況や国の保険収載対象範囲・金額などによる不確定要素が大きく、前提条件の設定や算出が難しいということを踏まえたうえで、各数値を見なければならないことに注意が必要である。
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