ヒトの臓器、動物体内で作製 政府が研究容認へ

これまで、主にマウスなどで進められてきた基礎研究が、いよいよ大型の動物実験の段階に入る。動物と人間のキメラという倫理的や科学的な議論はあるにせよ、多くの一般人が想像するであろう立体的な臓器を作成するためには避けて通れない研究である。



現在は、iPS細胞の分化誘導によって、主に心筋シートや神経などの臓器を構成する一部は生成できるようになってきているが、やはり究極のゴールの一つとして、患者自身のiPS細胞による臓器移植があげられる。今後益々、このような研究が増えることが予想され、法整備など周辺環境の早急な整備が急がれる。

ヒトの臓器、動物体内で作製 政府が研究容認へ

出所:2013-06-19 日本経済新聞

ブタなどの体内で人間の膵臓(すいぞう)や肝臓を作る実験が動き出す――。動物を利用して人間の移植用臓器を作るための基礎研究を認める方針を18日、国が示した。iPS細胞(人工多能性幹細胞)などの技術を活用したものだが、人間と動物の両方の細胞を持った新たな動物を生み出すことにつながり、双方の境界をあいまいにさせるなど、人間の尊厳に関わる問題もはらむ。

政府の総合科学技術会議は18日、生命倫理専門調査会を開き、ヒトの臓器を持った動物を作る研究を容認する方向で大筋合意した。将来、動物の体内で作った臓器を移植用に利用できる可能性がある。総合科技会議が7月をメドに最終決定した後、文部科学省が研究指針の改定に着手する。

動物を使った「臓器工場」については安全面や倫理面での課題も多い。総合科技会議は研究に一定の歯止めをかけながら慎重に進めるべきだとしており、解禁する際の研究ルールを今後詰める。

あらかじめ特定の臓器ができないように遺伝子操作した動物の受精胚に、iPS細胞などから作ったヒトの細胞を入れた「動物性集合胚」を作製。この集合胚を動物の母体内に戻して出産させると、生まれた子はヒトの細胞でできた臓器を持つとされる。

これまでも動物の受精胚の操作はできたが、母体内に戻すことは認めていなかった。ヒトの肝臓を持ったブタなどを作ることができ、移植医療への利用に道を開くことになる。

「臓器工場」を実現するための基礎研究は進んでいる。今年2月には東京大学の研究グループが、遺伝子操作によって自らの膵臓(すいぞう)を作れなくしたブタに、別のブタ由来の細胞で膵臓を作らせる実験に成功した。

ただ、動物性集合胚の研究は人の尊厳を脅かすとして慎重な意見も根強い。狙い通りに臓器ができたとしても動物由来のウイルスが感染する危険性もあり、安全上問題がないかどうかなどの検証が必要とな…[続きを読む

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