これまでの通説を覆したSTAP(スタップ)細胞

再生医療関連で、また一つ大きなニュースが入ってきた。ちょうど加齢黄斑変性(理化学研究所)や脊髄損傷(札幌医大)の臨床試験が開始されたタイミングでもあり、しばらくは大きな話題となるであろう。ここで、STAP細胞について、要点をまとめると以下の通りだ。

・生まれて間もないマウスのリンパ球で確認された。
 ※ヒト細胞に対して同様の作成方法で、同様の成果があるかは不明
 ※リンパ球以外にも、皮膚や肺、心臓の筋肉などの細胞からも作れた。

・新しい万能細胞をマウスの体内に移植すると、神経や筋肉、腸など様々な細胞に変化。
 ※iPS細胞と同様に、万能性/多様性の特徴が見られる。

・胎盤を含む全ての体細胞に分化
・マウスの胎盤に戻すと、胎児に成長
 ※この2点は、iPS細胞ではなかった大きな成果
 ※iPS細胞は、胎盤以外の全ての体細胞に分化
・iPS細胞と比べ、作成する成功率は高く(約10倍)、作成時間も短い(約1/10程度)
 ※成功率は7~9%でiPS細胞の1%未満より高く、
 ※作製に要する期間はiPS細胞の2~3週間よりも短い。

・iPS細胞に比べ、ガン化の可能性が低い可能性も。
 ※作成時にウイルスを使用しないため。但し、これは十分な追試験が必要。

酸の刺激だけで万能細胞作製 新型「STAP」理研が成功

出所:2014-01-29 MSN産経ニュース

弱酸性の刺激を与えるだけの簡単な方法で、あらゆる細胞に分化できる万能細胞を作製することに理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)のチームがマウスで成功した。人工多能性幹細胞(iPS細胞)とは異なる新型の万能細胞で、再生医療の研究に役立つと期待される。29日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。

体の細胞を万能細胞に作り替えるには、初期化という作業で受精卵の状態に逆戻りさせる必要がある。iPS細胞は遺伝子を使って初期化するが、今回の方法は酸性の溶液に浸すだけで簡単なのが特徴。開発した小保方(おぼかた)晴子研究ユニットリーダーらは、全く新しい万能細胞として「刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得(STAP=スタップ)細胞」と命名した。

研究チームは生後1週間以内のマウスの脾臓(ひぞう)から、血液細胞の一種であるリンパ球を採取し、水素イオン指数(pH)5・7の希塩酸溶液に約30分浸して刺激。これを培養すると数日で初期化が始まり、STAP細胞に変わった。作製したSTAP細胞は、神経や筋肉などの細胞に分化する能力があることを確認。実際に別のマウスの受精卵に注入し、仮親に移植して子を生ませると、STAP細胞は全身に広がり、あらゆる細胞に変わることができる万能性を持っていた。

再生医療への応用研究が進むiPS細胞は遺伝子操作に伴うがん化のリスクがあり、初期化の成功率も0・2%未満と低い。これに対しSTAP細胞は、外的な刺激を与えるだけなのでがん化のリスクが低く、初期化成功率も7~9%。成功率が高いのは生後1週間以内のマウスの細胞を使った場合に限定されることなどが課題だが、研究チームはメカニズムを解明し再生医療への応用を目指す。

今回の研究成果では、「動物の細胞は外からの刺激だけで万能細胞にならない」という通説を覆す画期的な発見ともいえるであろう。しかもオレンジジュースと同じくらいの酸性液で、体温に近い37度の試験管の溶液にマウスのリンパ球などの体細胞を入れ、30分間にわたり刺激するというしごく簡単な方法で作成できてしまったのである。報告によれば、75%の細胞は死んだが、生き残った25%の細胞のうち、その30%が万能細胞になったそうだ。又一つ、再生医療を待っている患者にとって、また一つ明るいニュースが増えたことは喜ばしい。
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